2008年5月10日

 ハニーハンター

函館に生まれた、木下君は水泳が得意だった。高校では水泳部に属し、活躍していたと自慢する。今夜も、居酒屋のいつもの席でジョッキ片手に そのころのことを語る。私としては、あまり語られたくもないのだが、この季節になると、どーしても避けて通れない話題なのだ。

今年も、初夏を迎えている、道理でビールがうまい。「海に行くと、魚介類が豊富で何でも獲れるんです」と云った風に語り始める。「函館の頃は、ウニ、ナマコ、アワビ、サザエが獲り放題で、生で食べたり、煮たり焼いたり、思い出すだけで涎が出ます、あの頃はよかったな」とか言うのだ。まるで老人の語り口のようだ。彼はまだ45歳だから、そうやって懐かしがってばかりだと、本当に老けてしまうぞ。

ところで、普通、アワビ、サザエ、ウニ等は漁業組合で養殖事業があり、保護もしている。従って、禁漁になっている筈である。これを無視して捕獲することは、犯罪行為にあたる。木下君に糾すと「そーらしいですね、だけど、そんなこと考えても見ませんでした」、やっぱり確信犯である。明らかな密漁だ。さらに、「伊豆でキャンプすると、必ず潜って捕獲して食べちゃうんですョ」と、反省もない。「木下君それは、明らかな犯罪行為だよ、やめたまえ」と、偉そうに注意すると、「オレが食べる分なんて、ほんの少しだし、いいんじゃないですか」こんな風に、開き直ってしまう木下君であった。そう言えば、彼、タバコはポイ捨てだし、ガムも紙につつまず、紙屑も道に捨てる。所謂、無法者なのだ、だから密漁なんて彼にとってなんでもない行為なのだろう。

だから、私は、木下君が大嫌いなのだ。その割にはいつも居酒屋に一緒にいる、どーしてなんだろー。

いつも、注意はするが一向に改まる気配はない。彼に、公共性は欠如していると、言わざる得ない。何とかして、社会の一員に仲間入りしてもらうために、努力してみよう。そうしないと会社の恥となる。

私は、いよいよ、勉強して木下君の分まで社会に貢献し、清く正しく生きなければならない。 今年、話題になった、浜名湖のアサリ密漁事件で逮捕者が出たが、木下君には関係ない。その頃、彼は九州に出張中であった無実である。それにしても、密猟は英語で「ハニーハンター」でよいのだろうか?



▲ページトップに戻る